
アリッサ・マケルヘニー|マラソンからHYROX世界王者へ、走りを変えた7カ月
ファーマーズキャリーは13位。最後のウォールボールも8位。それでも、アリッサ・マケルヘニーは2026年の女子ELITE 15世界選手権を56分59秒49で制しました。8つのワークアウトすべてが最速だったわけではありません。得意なランを持つ選手が、種目に使う力をどう残すかを学んだ歩みです。
初めてのHYROXから世界王者まで約7カ月。その前には、マラソンのオリンピック選考会出場を追い続けた時間がありました。本人の取材記事が伝える判断と、ストックホルムの公式記録を並べると、「速いランナーがそのまま勝った」だけではない経緯が見えてきます。
アリッサ・マケルヘニーはどんな選手?
名前:Alyssa McElheny/アリッサ・マケルヘニー
国:アメリカ
競技の土台:クロスカントリー、3000m障害、マラソン
マラソン自己ベスト:2時間34分28秒/2025年11月8日
HYROXの主な実績:2026年世界選手権・女子ELITE 15優勝/56分59秒49
自分が走るだけでなく、高校生の走りも支えてきた
Gazelle Sportsの本人紹介には、中学からランニングを始め、高校のクロスカントリーと陸上、大学の3000m障害へ進んだ経歴があります。2024–25年の紹介当時は、高校生の指導と月曜夜の地域ランニングクラブにも関わっていました。
大切な競技の思い出に挙げているのは、自分の全米大学選手権での評価や高校時代の優勝だけではありません。自分が指導する男子チームの州クロスカントリー優勝も、その一つです。走る本人と、他のランナーを支えるコーチという二つの立場が、本人の自己紹介に並びます。
オリンピック選考会への挑戦から、HYROXへ
「Ali on the Run」第894回の紹介文は、女子の米国オリンピック・マラソン選考会標準が2時間45分から2時間37分になったとき、本人には遠い目標と感じられたと伝えています。複数回の挑戦を経て標準を突破し、その後でHYROXへ踏み出しました。7カ月は運動を始めてからではなく、最初のHYROXからの期間です。
2025年4月:Glass City Marathonを2時間35分37秒で優勝。Gazelle Sports掲載の従来ベスト2時間37分31秒から、記録の差は1分54秒です。
2025年11月8日:マラソン2時間34分28秒。World Athleticsの自己ベスト欄に記録されています。4月の記録からは1分09秒の更新でした。
その2週間後:ミックスダブルスでHYROX初出場。「Ali on the Run」の番組紹介が、マラソン後の初挑戦として伝えています。
2026年4月:ワルシャワでは世界選手権への出場資格を目指し、抑えたレースを選びました。
2026年6月:ストックホルム世界選手権の女子ELITE 15で優勝。初HYROXから約7カ月後でした。
マラソンの記録はWorld Athletics、初出場の時期と7カ月という経緯はAli on the Runの番組紹介、4月の判断はRox Lyfeの本人取材記事に基づきます。初めてのHYROXに出る前に、マラソンで標準記録を突破する競技歴がありました。
飛ばしすぎたレースから学んだ、最後まで動ける配分
Rox Lyfeの取材記事によると、グラスゴーでは序盤のランを飛ばし、スレッドプッシュを休まず押し切ろうとしました。最後のウォールボールでは苦しくなり、10回ずつへ区切ることになったと振り返っています。
ワルシャワで選んだのは、マラソンのような強度で走り、先に出る選手を追わないこと。目的は、制御したレースで世界選手権への出場資格を得ることでした。ランで競争に加われる走力を生かしながら、改善の余地を感じるワークアウトに力を残そうとした判断です。
補給も、グラスゴーとラスベガスでは開始前だけだったジェルを、トゥールーズ以降はローイング後にも半分取る形へ。本人は最後のウォールボールへ力を残せたと感じたそうです。これは本人の経験で、全員共通の補給量やタイミングではありません。
3000m障害で走るリズムが途切れる経験も、本人はHYROXとのつながりとして語っています。Rox Lyfe:レース配分と補給の本人談
ワルシャワと世界選手権では、読める情報が違います。4月のワルシャワは本人がどう走ろうと決めたかを知るレース。6月のストックホルムは、その後に世界王者になった大会の結果を読めるレースです。大会条件の異なる記録を並べて、配分や補給変更だけの効果を測った比較ではありません。
世界王者になったレースを、8種目から見る
ストックホルムの公式個人結果は総合1位、56分59秒49。Workout summaryのTimeとPlaceを組にして見ると、得意な種目と総合順位は一致しないことが分かります。

SkiErg / タイム(分:秒):4:14 / 種目別順位:4位
スレッドプッシュ / タイム(分:秒):2:14 / 種目別順位:3位
スレッドプル / タイム(分:秒):3:16 / 種目別順位:4位
バーピーブロードジャンプ / タイム(分:秒):3:22 / 種目別順位:7位
ローイング / タイム(分:秒):4:15 / 種目別順位:4位
ファーマーズキャリー / タイム(分:秒):1:40 / 種目別順位:13位
サンドバッグランジ / タイム(分:秒):3:17 / 種目別順位:2位
ウォールボール / タイム(分:秒):3:54 / 種目別順位:8位
ランジは3分17秒・2位、プッシュは2分14秒・3位。一方、キャリーは1分40秒・13位、ウォールボールは3分54秒・8位でした。種目別順位に1位の欄がなくても総合優勝は成立しています。Placeはその種目の所要時間の順位で、各地点を何番目に通過したかを示す欄ではありません。
キャリーの13位と次のランジの2位から、何人を追い抜いたかまでは読み取れません。本人のレースを理解するときは、公式個人結果の総合順位と種目別記録を分け、1種目だけで全体の強さを決めない読み方ができます。
8回のラン記録を、配分の話と分けて読む
同じ公式Workout summaryのRunning 1〜8は、順に2:48、3:45、4:08、4:19、4:10、4:16、4:26、3:03。Running 3〜7は4分08秒〜4分26秒の範囲ですが、最初と最後はそれより短い表示です。
これは各計測区間の所要時間で、1kmあたりのペースとは別です。各区間の距離がないまま「最初は1km2分48秒、最後に再加速」とは読めません。ラン1〜8の時間表示、ワークアウトの順位、本人が4月に選んだ配分は、それぞれ違う情報です。
ワルシャワで先行選手を追わなかったという判断に、ストックホルムの8つの数字をそのまま当てはめないことが大切です。世界王者の速さを知る資料と、本人がレース中に何を目安にしたかを知る資料を合わせると、数字だけの人物紹介より具体的に歩みを追えます。
本人の言葉でもっと知る
ワルシャワまでの判断を詳しく知りたい方はRox Lyfeへ。取材は世界選手権優勝前の2026年4月で、掲載記事はその後の優勝にも触れています。Rox Lyfe:Alyssa McElhenyのインタビューを見る
優勝後の目標を追うなら、2026年7月9日の「Ali on the Run」第894回へ。公式チャプターは、16分10秒からランニングとの現在の関係、37分からHYROXの得意・不得意、46分から2028年選考会の話題、1時間01分10秒から世界選手権優勝の話題を案内しています。Ali on the Run 第894回を聴く
adidasも2026年6月19日の世界選手権レポートで、新たに契約したアリッサの優勝を紹介しています。ランニングの目標とHYROXの世界王者という実績が重なった時点です。メーカーの報告は契約と優勝を伝えるもので、シューズ間の性能比較ではありません。
自分もランニングからHYROXへ進みたいなら、初めてのHYROX練習ガイドへ。本人の配分をそのままコピーする前に、器具を使う初回の準備を確認できます。HYROX選手名鑑では、ほかの選手の経歴と世界選手権の実績を読めます。
参考資料
文:ROX NOTE編集部
取材記事・経歴資料:2026年10月30日確認。世界選手権の公式詳細:2026年10月26日確認。
